まぐろのいろいろ まぐろのいろいろ

新鮮な食材を活かして生で食べる
和食文化のなかで、
まぐろは大きな存在感を放っています。
他にはない味わいと食感、
そして華やかさがあって、
大人も子どもも大好きな
魚の王様、
まぐろを知れば、まぐろを食べるのが
もっと楽しみになります。

まぐろとは?

まぐろはスズキ目サバ科マグロ属に
分類されるまぐろ類の総称。
世界中の海を力強く泳ぐ大型の回遊魚です。

まぐろにも
いろいろ種類が
あるんです。

日本で食べられている主なまぐろは5種類。
一口に「まぐろ」と言ってもその大きさや見た目、
泳いでいる海域や食べもの、
身質や味わいに違いがあります。

くろまぐろ(本まぐろ)

まぐろの中で最も大きくなる種類で、「まぐろの王様」、希少性の高さから「黒いダイヤ」とも呼ばれています。
住んでいるのは北半球の温帯海域。日本近海、地中海、大西洋の北西部が主な漁場です。
くろまぐろの好物は、回遊する海によって異なります。例えば冬の日本近海ならまるまると太った旬のいか、スペインやイタリアなど地中海ではいわし、北極圏近くのアイルランド沖では甘えびを多く食べています。
世界の海の新鮮な海産物を食べるなんともぜいたくな魚なのです。
口の中でふわりと甘くとろけるトロ、ねっとりとして味わい深く、ほのかな酸味を感じさせる赤身、どちらも思わずうなってしまうほどのおいしさ。料亭や寿司店で供される高級品です。

みなみまぐろ

くろまぐろと並ぶ高級なまぐろ。「まぐろの女王」、「赤いダイヤ」と称されています。
脂ののった大トロの部位は、くろまぐろとみなみまぐろからしかとれません。赤身は色が深く、コクがあります。
回遊するのは南半球のみ。温かい海をイメージするかもしれませんが、南極周辺の極寒の海を力強く泳いでいます。別名インドまぐろとも呼ばれますが、これは昔、インド洋で多く漁獲されたからといわれています。インド産のまぐろではありませんのでご注意を。
主に食べているのはいわしやあじ、いかなど大きな群れで泳ぐ魚。しかしみなみまぐろの中でも特に身質がいいといわれる南アフリカ・ケープタウン沖のまぐろは、栄養価の高いナンキョクオキアミという大型のオキアミを食べて育ちます。

めばちまぐろ

日本国内で消費されるまぐろのおよそ4割を占めるとてもポピュラーな種類です。目が大きく丸いことから「めばち(目鉢)」と名がついたとされ、「だるま」や「めぶと」「ばち」とも呼ばれます。
住んでいるのは、世界中の温帯・熱帯海域。くろまぐろとみなみまぐろに次いで市場価値が高く、特に日本近海で秋から冬の旬の時期に漁獲される生の赤身は高値がつくとされています。
まぐろらしい色鮮やかな赤身が特徴で、味わいも豊か。刺身や寿司ねたはもちろん、頭のかぶと焼きや骨付きのカマ、ハラミなど、さまざまな部位を食します。
漁獲量が多いので価格も比較的安く、庶民の味方。ただし、ほとんどが赤身なので、脂がのって筋の少ない上質の中トロは、希少価値が高いことで知られています。

きはだまぐろ

きはだ(黄肌)の名前は、体やひれが黄色みを帯び、長い背びれと大きな尻びれが黄金色になることに由来しています。住んでいるのは、めばちまぐろと同様に世界中の温帯・熱帯海域。かつおや他のまぐろ類と一緒に群れをなして回遊しています。
古くから四国や九州など、西日本が産地の中心だったためか、関東よりも西日本、また沖縄でよく食べれられています。身の色は他のまぐろにに比べて薄く、鮮やかな桃色。旨みがあっさりとして、後味がいいことも関西で好まれる理由かもしれません。
くせがなく、缶詰の原料としても利用されている人気のまぐろ。頭から尻尾までほぼ赤身で、トロの部分はありませんが、刺身以外にムニエルやフライなどの料理でも楽しめます。

びんながまぐろ(びんちょうまぐろ)

長い胸びれを鬢(びん)に例えた「びんなが」が名前の由来。一般的には「びんちょう」、また胸びれを広げて泳ぐ姿がとんぼのように見えることから、「とんぼまぐろ」とも呼ばれています。
世界の温帯海域に住んでいますが、特にオーストラリア西側のフリーマントル沖は好漁場として有名です。
身質はやわらかく、色は淡い桃色。まぐろの中では数が多く安価なため、主に缶詰の原料として欧米でも多く消費されています。
しかし近年では脂ののった「びんトロ」が回転寿司店で人気となり、スーパーの刺身売り場でも定番に。あっさりとしながらコクがあり、ドレッシングと合わせてカルパッチョやポキ丼、まぐろのステーキやみそ漬け、煮付けなど、さまざまな料理に使われます。

Column #1

かじきはまぐろ?

大きな体で時速100km以上の高速で泳ぎ、まぐろによく似ていることから「かじきまぐろ」とも呼ばれるかじき。
実はスズキ目メカジキ科とマカジキ科に属するまったく別の種類の魚です。
まぐろ遠洋漁業で用いられる延縄漁にはかじきもよく掛かるので、まぐろと一緒に水揚げされることも多くあります。
世界中でステーキやソテーで食べられており、日本でも照り焼きや塩焼きが好まれています。

部位によって
味や食感が
全然違います。

本まぐろの大トロ、中トロ、赤身は
まぐろのどの部分にあたるのでしょうか。
また、よく知られた部位以外の
希少部位も紹介します。

頭と尻尾を切り落とした胴体を、背骨を中心にして背中側と腹側に切り分けます。
それを縦に左右に、横に3つに分けたものを頭から順にカミ(上)・ナカ(中)・シモ(下)と呼びます。

脳天、目の真上から背にかけてとれる三角形の部分。はちの身、頭肉とも呼ばれる。味は中トロに似て甘みがあり、しっかりとした弾力がある。背節カミ、赤身の部分。頭、背骨に近い赤身は柔らかく、コクがある。背節ナカ、筋が少ない上物の赤身が取れる部分。大型の本まぐろでは、この部分の皮の近くからも中トロがとれる。背節シモ、赤身の部分。細い筋が多く入っている。尾の身、まぐろのしっぽの部分。よく動くところなので、筋が多く身が引き締まっている。唐揚げやソテーにすると筋がゼラチン状になり、もっちりとした食感に。ほほ肉、まぐろのほほ。細かい筋が入っているが、加熱するともっちりした独特の歯応えで人気。ステーキなどで供されることが多い。腹節カミ、脂のりがよく、中トロから大トロの部分。カマ、の下に最も脂肪分が多い大トロがある。カマエラの後ろの部分で、脂がのっている。塩焼きにすると脂の甘みとほろりとした身がとても美味。ハラモ、腹節カミ・ナカの下の部分。非常に脂がのっており筋が多い。まぐろの筋はコラーゲンなので、加熱するとゼラチン状になり、プリッとした食感が楽しめる。ねぎま鍋にもぴったり。腹節ナカ、中トロがとれる部分。腹節シモ、中トロから赤身の部分。 まぐろの図解
① 脳天

目の真上から背にかけてとれる三角形の部分。
はちの身、頭肉とも呼ばれる。
味は中トロに似て甘みがあり、しっかりとした弾力がある。

② 背節カミ

赤身の部分。
頭、背骨に近い赤身は柔らかく、コクがある。

③ 背節ナカ

筋が少ない上物の赤身が取れる部分。
大型の本まぐろでは、この部分の皮の近くからも中トロがとれる。

④ 背節シモ

赤身の部分。
細い筋が多く入っている。

⑤ 尾の身

まぐろのしっぽの部分。よく動くところなので、筋が多く身が引き締まっている。唐揚げやソテーにすると筋がゼラチン状になり、もっちりとした食感に。

⑥ ほほ肉

まぐろのほほ。
細かい筋が入っているが、加熱するともっちりした独特の歯応えで人気。
ステーキなどで供されることが多い。

⑦ カマ

エラの後ろの部分で、脂がのっている。
塩焼きにすると脂の甘みとほろりとした身がとても美味。

⑧ 腹節カミ

脂のりがよく、中トロから大トロの部分。
カマの下に最も脂肪分が多い大トロがある。

⑨ 腹節ナカ

中トロがとれる部分。

⑩ 腹節シモ

中トロから赤身の部分。

⑪ ハラモ

腹節カミ・ナカの下の部分。非常に脂がのっており筋が多い。まぐろの筋はコラーゲンなので、加熱するとゼラチン状になり、プリッとした食感が楽しめる。ねぎま鍋にもぴったり。

Column #2

養殖まぐろの今

1990年代から徐々に市場で見られるようになった養殖まぐろ。
現在、スーパーなどで販売されるお手頃価格の本まぐろのほとんどが養殖まぐろです。
日本では1970年代から近畿大学が本まぐろの完全養殖の研究をスタートさせ、2002年に成功させました。
さらに民間企業でも研究が進められています。
養殖まぐろの利点は、天然の2倍程度の速さで成長させ、人気のあるトロの部分を増やすことができること。
技術が進んで品質や価格も安定しています。また、水産資源の保護の面でも養殖への関心は高まっています。
以前は養殖まぐろといえば、メキシコ産がほとんどでしたが、現在はヨーロッパ諸国や東南アジア、
オーストラリアでも養殖が進んでいます。

まぐろの
栄養価の高さに
びっくり!

栄養価の高さで知られるまぐろですが、
部位によって含まれる栄養素は異なります。
まぐろの赤身は牛や豚よりも
たんぱく質が豊富で、
100gあたり30g近くのたんぱく質を含み、
脂質が少ないため低カロリーでヘルシーです。
また鉄や抗酸化力の高い
微量ミネラルのセレンも含まれます。
体力向上や貧血防止に効果的な部位です。
トロは脂質の多い部分ですが、
魚の脂肪は動脈硬化を防ぐとされる
不飽和脂肪酸をたくさん含みます。
特に青魚に多いDHAは、
脳や目の機能を活性化する役割を果たし、
EPAは血栓をできにくくしたり、
コレステロール値や血圧の上昇を
抑える作用があるといわれます。
複雑な調理をせずに、
生でおいしく食べられるのもまぐろの魅力。
さまざまな部位を少しずつ食べて、
まぐろの栄養を余さずとりましょう。

Column #3

まぐろの身はなぜ赤い?

まぐろの身が赤いのは、魚の筋肉に含まれる「ミオグロビン」という赤い色素によるものです。
このミオグロビン、魚が水の中で取り込む酸素を筋肉に蓄える役割をしています。
広い海を高速で泳ぎ回るまぐろは、酸素の消費量が多く、ミオグロビンがたくさん必要なので、
鮮やかで濃い赤色をしているのです。
ミオグロビンは体に吸収されやすいヘム鉄を含むので、鉄分不足による貧血予防のほか、疲労回復にも役立つとされていますが、
適切な温度帯で保管しないと酸化が進み、
褐色のメトミオグロビンへと変化していきます。
変色は見た目が悪いだけでなく味や触感にも影響します。これがまぐろが他の魚よりもデリケートで、
-60℃という超低温で保管される理由のひとつです。
家庭の冷凍庫の温度(約-18℃)では、時間とともに劣化が進んでしまうため、
冷凍まぐろは届いたらできるだけ早く、食べる時間に合わせて解凍するのがおいしく食べるコツなのです。

皆で囲んで食事をするイラスト